
相続税対策としてアパートを建てるのは本当に得なのか?評価額が下がっても現金不足や売却損で大損するケースを数字でわかりやすく解説。空き家地獄を避けるために知っておくべき注意点とは。
もくじ
- 【空き家地獄】相続税対策でアパートなんて建てるな!
- なぜ空き家が増え続けているのか
- なぜ人々は賃貸住宅を建て続けるのか
- しかし、それが「空き家地獄」を生んでいる
- 相続税対策のアパートは本当に得なのか
- 相続税の仕組みを、ざっくり数字で見てみよう
- しかし、ここからが本当の問題
- 相続税の支払い期限は意外と短い
- さらに相続人が複数いると話はもっと複雑になる
- 数字上の節税と、現実の負担は別物
- 一番得をしているのは誰か
- 「1億円で売れたら成功」――本当にそうでしょうか?
- もし1億円で売れなかったらどうなるのか
- ここに相続税がさらにかかる
- 最初から現金で持っていた場合と比較すると
- 「相続税は減った」のに、なぜ損をするのか
- 大手ハウスメーカーで建てるほど、この傾向は強くなる
- 相続税は減ったかもしれない。しかし…
- 騙されてはいけません
- 不動産はプロでも失敗する投資
- 相続税対策そのものを否定しているわけではない
- まとめ|相続税対策でアパートは本当に得なのか?
【空き家地獄】相続税対策でアパートなんて建てるな!
「空き家の半数は賃貸住宅 相続税対策が“作り過ぎ”に拍車」
(出典:週刊エコノミスト Online)
全国の空き家数は約900万戸、空き家率は13.8%。
相続税対策が空き家増加の一因になっているのではないか、というニュースです。
こちらのデータを見てください。
空き家の数が、年々右肩上がりで増加していることが分かります。
・全国の空き家総数:約900万戸
・そのうち賃貸用空き家:443万戸(約49%)
・東京都では、空き家約90万戸のうち63万戸が賃貸用住宅
つまり、空き家のおよそ半分は賃貸住宅なのです。
なぜ空き家が増え続けているのか
理由はシンプルです。
賃貸住宅が作られ続けているから。
日本は今後、本格的な人口減少社会に突入します。
それにもかかわらず、
・アパート
・マンション
・賃貸住宅
は今も全国で建設され続けています。
需要より供給が明らかに多い状況です。
なぜ人々は賃貸住宅を建て続けるのか
その大きな理由の一つが、相続税対策です。
・現金で3億円を保有しているより
・賃貸住宅を3億円分所有している方が
相続税が安くなる仕組みがあります。
賃貸住宅は、法律上、
・土地は「貸家建付地評価」
・建物は「貸家評価」
が適用され、時価の6〜7割程度で評価されるためです。
評価額が下がる
→ 課税対象が減る
→ 相続税が軽減される
この仕組みが、アパート建築を後押ししています。
さらに、
・相続税の課税対象者が増えた
・株高やインフレで資産額が膨らんだ
・富裕層ほど相続税対策を意識するようになった
こうした背景もあり、
相続税対策目的のアパート建築は今も減る気配がありません。
しかし、それが「空き家地獄」を生んでいる
問題はここです。
相続税対策として建てられるアパートの多くは、
・賃貸需要の精査が不十分
・「節税できるかどうか」だけが判断基準
になりがちです。
結果として、
・立地条件が弱い
・人口が減少していく
・競合物件が増え続ける
このような環境で、空室が増えるのは当然の結果です。
こうして、
住む人のいない賃貸住宅=空き家
が全国に増え続けています。
相続税対策のアパートは本当に得なのか

相続税の仕組みを、ざっくり数字で見てみよう
ここで、相続税の話をかなりシンプルな例で説明します。
(※実際の相続税計算はもっと複雑ですが、理解しやすさを優先して割愛します)
現金1億円を相続した場合
仮に、
・現金:1億円
・相続税率:20%
だとすると、
1億円 × 20% = 2,000万円
相続税として2,000万円を納付します。
結果として、
・相続税:2,000万円
・手元に残る現金:8,000万円
これで話は終わりです。
非常にシンプルで、後腐れもありません。
売値1億円のアパートを相続した場合
次に、同じ1億円でも「アパート」に形を変えたケースを考えてみましょう。
不動産は、現金と評価の仕方が異なります。
仮に、
・実際の売値:1億円
・相続税評価額:7,000万円(約7割)
だったとします。
この7,000万円に対して、
同じく税率20%がかかるとすると、
7,000万円 × 20% = 1,400万円
相続税は、
2,000万円 → 1,400万円
となり、表面上は、
👉 600万円の節税
に見えます。
ここだけを見ると、
「やっぱりアパートを建てた方が得だ」
と感じてしまう人が多いのです。
しかし、ここからが本当の問題
相続税には、非常に重要なポイントがあります。
相続税は「原則、現金一括納付」
ということです。
つまり――
アパートで相続税が安くなったとしても、
1,400万円は現金で用意しなければならない
という点は変わりません。
現金を相続していれば問題は起きない
現金1億円を相続していれば、
・そこから2,000万円を納付
・残り8,000万円が手元に残る
これで終了です。
納税資金に困ることはありません。
しかしアパートの場合は違う
アパートを相続した場合、
・相続税は1,400万円に下がった
・しかし現金はほとんど残っていない
という状況がよく起こります。
もし相続人(子どもなど)が、
・1,400万円の現金を持っていなかった場合
どうなるでしょうか。
答えは一つです。
👉 不動産を売って現金を作るしかない。
相続税の支払い期限は意外と短い
相続税の申告・納付期限は、
相続開始(死亡)から10か月以内です。
この期限内に現金を用意できなければなりません。
そのため、
・ゆっくり売却先を探す
・高値で売れるのを待つ
ということは、ほぼ不可能です。
結果、
**「売り急ぎ」**になります。
売り急げば当然、
・価格交渉で不利になる
・相場より安く買い叩かれる
こうした事態が起こりやすくなります。
さらに相続人が複数いると話はもっと複雑になる
現金であれば、
・人数で分ける
・話が比較的シンプル
で済みます。
しかしアパートの場合は違います。
・不動産は簡単に分割できない
・共有名義になる
・売るにも全員の同意が必要
など、権利関係が一気に複雑化します。
結果として、
・「売りたい人」と「持ち続けたい人」で揉める
・相続が長期化する
・最悪、争族になる
というケースも珍しくありません。
数字上の節税と、現実の負担は別物
| 比較項目 | 現金 | アパート |
|---|---|---|
| 相続税評価 | そのまま | 約6〜7割 |
| 相続税額 | 高い | 安く見える |
| 納税方法 | 現金で支払える | 現金を別途用意 |
| 納税資金 | 問題なし | 不足しやすい |
| 売却の必要 | なし | あり得る |
| 相続人トラブル | 少ない | 起きやすい |
| 相続後の手間 | 少ない | 非常に多い |
このように、
・帳簿上は600万円節税できたとしても
・実際には現金不足・売却トラブル・時間的制約
といった問題を同時に抱えることになります。
つまり、
相続税が安くなる=得をする
とは、決して言い切れないのです。
一番得をしているのは誰か
冷静に考えると明らかです。
・建築費を受け取る不動産会社
・金利収入を得る金融機関
この2者だけが、ほぼノーリスクで利益を得ています。
一方、オーナー側は、
・長期ローン
・老朽化リスク
・空室リスク
すべてを背負う立場になります。
知識がないまま進めてしまうと、
「相続税対策」という名目で、極めて不利な契約を結ばされることになりかねません。
とても重要な視点です。
ここを言語化できると、読者は**「節税=得」という思い込みから完全に目が覚めます。**
「1億円で売れたら成功」――本当にそうでしょうか?
ここで、もう一歩踏み込んで考えてみましょう。
確かに、
・1億円で建てたアパートが
・相続税評価額7,000万円になり
・最終的に1億円で売れた
この場合は、形式上は相続税対策が成功したと言えます。
相続税は評価額ベースで計算されるため、
「評価は7,000万円、売却価格は1億円」という理想的な結果になれば、確かに節税効果は成立します。
しかし――
問題はそこまでうまくいくケースが、どれほどあるかという点です。
もし1億円で売れなかったらどうなるのか
では、現実的なケースを考えてみましょう。
1億円の現金でアパートを建てた
もともとは、1億円の現金を持っていたとします。
それを相続税対策として、
・大手ハウスメーカーで
・新築アパートを建てた
という状況です。
しかし、いざ売ろうとすると…
築年数の経過や立地、需要の低下により、
・売却価格:7,000万円
にしかならなかったとしたらどうでしょうか。
つまり、
1億円 → 7,000万円
この時点で、
👉 3,000万円の資産価値が消えています。
ここに相続税がさらにかかる
相続税評価額7,000万円に対して、
仮に税率20%とすると、
7,000万円 × 20% = 1,400万円
相続税として、現金で納付が必要になります。
つまり最終的には、
・売却代金:7,000万円
・相続税:▲1,400万円
手元に残るのは、
5,600万円
です。
最初から現金で持っていた場合と比較すると
もし最初から現金1億円を相続していれば、
・相続税2,000万円を支払い
・手元には8,000万円が残る
という結果になります。
一方でアパートを建てた場合は、
・建築費1億円
・売却価格7,000万円
・相続税1,400万円
結果、
👉 手元に残るのは5,600万円
差額は、
8,000万円 − 5,600万円 = 2,400万円
実質的に、
2,000万円以上損をしていることになります。
「相続税は減った」のに、なぜ損をするのか
理由は明確です。
・節税できたのは「評価額」だけ
・失ったのは「実際の資産価値」
だからです。
相続税が600万円安くなっても、
・リセールで3,000万円下がれば
・その時点で完全に赤字
になります。
大手ハウスメーカーで建てるほど、この傾向は強くなる
特に問題なのが、
です。
・建築費は相場より高い
・仕様は過剰にハイグレード
・投資利回りは低い
その結果、
・売却時の価格は伸びない
・修繕費は割高
・管理コストも高止まり
という構造になります。
最終的に利益を得るのは、
この2者だけです。
相続税は減ったかもしれない。しかし…
確かに、相続税は一時的に減ったかもしれません。
しかし、
・資産価値は大きく目減りし
・売却時に損失が確定し
・相続人には手間とストレスだけが残る
これでは、本末転倒です。
騙されてはいけません
「相続税が下がります」
この言葉は、とても魅力的に聞こえます。
しかし、その裏側では、
・誰が儲かるのか
・誰がリスクを負うのか
を冷静に考える必要があります。
相続税対策で一番大切なのは、
税金を減らすことではなく、
資産を減らさないこと。
この順番を間違えた瞬間、
相続対策は失敗します。
どうか、「節税」という言葉だけで判断しないでください。
ここで、はっきり伝えたいことがあります。
相続税対策としてのアパート建築は、
長期的に見て割に合わないケースが非常に多い。
確かに、相続税は一時的に下がるかもしれません。
しかしその裏で、
・空室リスク
・家賃下落
・修繕費・大規模改修費
・金利上昇リスク
・管理の手間と時間
・将来の売却困難
といった、数十年にわたるリスクを背負うことになります。
相続税が数百万円下がっても、
その後の損失で簡単に相殺されてしまうケースは珍しくありません。
不動産はプロでも失敗する投資
不動産投資は、プロであっても失敗することがあります。
それほど難易度が高い分野です。
にもかかわらず、
・経験なし
・知識なし
・一度きりの建築
で成功させようとするのは、現実的とは言えません。
相続税対策そのものを否定しているわけではない
誤解してほしくない点もあります。
・不動産が相続税対策として有効な場合があるのは事実
・専門家や投資家が設計した対策は合理的なことも多い
ただし、
不動産の知識がない人が行う相続税対策アパートは、
失敗する確率が極めて高い
という点は、強く認識しておく必要があります。
まとめ|相続税対策でアパートは本当に得なのか?

相続税対策としてアパートを建てることは、
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ハウスメーカーにいいようにされることだけは知識武装して避けて下さい。
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