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ゴールドは“守りの資産”──分散投資の中でどう位置づけるか

金価格が過去最高を更新。今こそ知りたい「ゴールドの正しい扱い方」。分散投資の一部として金をどう持つべきか、日経マネー風に徹底解説。円+オルカン+少量の金という最適ポートフォリオを提案。

 

ゴールドは“守りの資産”──分散投資の中でどう位置づけるか

 

もくじ

 

 


1. いま、なぜ金が注目されているのか

2025年秋、金価格は1gあたり2万1,000円を超え、史上最高値を更新した。

わずか5年前(2020年)には7,000円前後だったことを考えると、約3倍の上昇である。

田中貴金属の銀座店では購入希望者が殺到し、特に50g以下の小型地金は販売一時停止となる異例の事態となった。

 

「金を買いたくても買えない」という状況は、バブル期以来ほとんど例がない。

ニュース映像では、銀座本店の前に長蛇の列ができ、
「値上がりしても今のうちに買っておきたい」という声が相次いだ。
それだけ今、人々の間で**“金=安全資産”への信頼が急速に高まっている**という証拠だ

 

金価格の推移を示した5年チャート

出典:三菱マテリアル「金価格推移」



背景には、世界的なインフレ・財政赤字地政学リスク・円安など、複数の要因が絡み合っている。

 

日本だけでなく世界各国で、中央銀行までもがゴールドを積み増している。

特に日本では長期金利上昇や円安の進行により、「資産を守りたい」という意識が高まっている。

 

しかし、こうした状況を見るときこそ冷静さが求められる。
金は確かに「安全資産」ではあるが、“増やす資産”ではない。
短期的な値上がりを追うのではなく、分散投資の中でどう位置づけるかを考えることが大切だ。

金は**“攻める資産”ではなく、“守る資産”**だということだ。

 


2. ゴールドの本質 ― 通貨価値の裏づけを補う「無国籍の資産」

金には配当も利息もない。
にもかかわらず数千年にわたり価値を保ち続けてきたのは、それが「信用の最後の砦」だからである。

 

通貨は国の信用に基づく「約束の紙」だ。
だが、その発行主体である政府が債務を膨らませ、中央銀行が通貨を増刷すれば、約束の価値は薄れる。
金はそうした“約束の世界”から独立して存在する、数少ない「実物の基軸」である。

 

金の本質的価値とは、**他の資産が揺らいだときに機能する“安全弁”**だ。
株式や債券が暴落しても、金は違う方向に動くことが多い。
この「相関の低さ」が、分散投資において金が持つ最大の意義といえる。


3. 価格高騰の背景 ― 不安という燃料

直近の金高騰を支えているのは、次の5つの要因だ。

  1. インフレ:通貨価値の下落に対する防衛需要

  2. 財政不安:先進国の債務膨張による信用不安

  3. 中央銀行の金購入:特に新興国がドル依存からの脱却を目指す動き

  4. 地政学リスク:戦争・紛争・災害などのリスク拡大

  5. 円安:ドル建て価格に円安が上乗せされ、円建て金価格を押し上げ

 

言い換えれば、“恐れ”が金の価格を押し上げている
景気が良く、世界が安定しているとき、金はあまり買われない。
つまり、金は「希望」ではなく「不安」に支えられる資産だ。


4. ゴールド投資の位置づけ ― 攻めではなく「静かな保険」

株式や不動産のような成長性はないが、通貨・債券・株のいずれにも属さない“独立した存在”である。
ゆえに、他の資産が危機に陥ったとき、ポートフォリオ全体のダメージを緩和してくれる。

 

たとえるなら、金は「資産の防火壁」であり、保険に近い。
火事が起きなければ価値は感じにくいが、いざという時に頼りになる。
長期的な資産形成においても、「増やす」と「守る」の両輪が重要であり、金は後者の役割を担う。


5. ゴールドの保有手段と特徴

手段 特徴 メリット デメリット 向いている人
地金(じがね) 現物を保有 物理的実感、保険的価値 保管リスク・手数料 実物を持ちたい人
金貨 美観・贈答用 少額でも可愛いデザイン性 加工費で割高 コレクター・贈答目的
純金積立 定期購入 少額から・ドルコスト平均 手数料高め 積立投資派
ETF 証券口座で取引 流動性高い・手軽 現物引き出し不可 管理を簡便にしたい人

6. どのくらい持つべきか ― バランスがすべて

金融アナリストの多くは、**総資産の5〜10%**を目安に金を組み込むことを推奨している。
これは「暴落時の下支え」と「過剰な機会損失の防止」のバランスを取るためだ。

 

たとえば資産1,000万円の場合、金50〜100万円が現実的だろう。
残りを株式・債券・現預金などに振り分け、周期的にリバランスを行うことで全体のリスクを管理する。

 

このように、金は“主役”ではなく“脇役”として光る。
資産全体を俯瞰して、「不安を静めるパート」をどの程度置くかがポイントである。


7. 税金と出口戦略 ― 売るタイミングを意識する

金の売却益には「譲渡所得税」がかかる。
年間50万円までの特別控除があるため、少額で分散して売却するのが得策だ。

また、1kgバーを一気に売ると税負担が大きくなるため、小型地金や少額積立が人気を集めている。

こうした出口をあらかじめ設計することが、長期保有のストレスを軽減する。


8. 金は「守り」、株は「攻め」 ― 生産性の違いを理解する

ここで大切なのは、金と株の本質的な違いを理解することだ。

金は人々が「価値がある」と信じているから価値がある。
それ自体が利益やキャッシュフローを生むわけではない。
いわば「価値保存の象徴」であり、「経済的な生産性」を持たない資産だ。

 

一方、株式会社は人と技術を使って価値を生み出す。
企業が利益を上げるたび、株主にも富が還元される。
つまり、株式は**経済の成長を取り込む“生産資産”**である。

 

長期で資産を増やしたいなら、成長性のある資産を持つことが欠かせない。
その意味で、**ゴールドは“主役ではなく、脇役としての守り”**が最適なポジションだ。


9. 結論 ― 円+オルカン(またはS&P500)を軸に、金は5〜10%で十分

資産形成の基本構造は、

 

これが「成長を取り込みながら、通貨変動にも強い」中核になる。
そこに、ゴールドを5〜10%だけ添える
この比率が、“不安に強く、成長も取り込める”最適解のひとつだ。

いくら金価格が上がっても、「値上がりしているから買う」はギャンブルと同じ。
長期的な資産設計の中で、冷静に、構造として組み込むのが正しい使い方である。


10. まとめ ― ゴールドは“ゼロにならない資産”であり、“増やすための資産”ではない

項目 ゴールド 株式・投資信託
本質 信用リスクのヘッジ 生産活動への投資
リターン源泉 希少性・心理的価値 利益・成長
適正比率 総資産の5〜10% コア資産として中心
投資目的 不安時の防波堤 資産の増大
タイプ 守り 攻め

11. 編集後記 ― 「増やす」と「守る」の調和を

投資の世界では、「成長の取り込み」と「価値の保存」は車の両輪だ。
株式で増やし、金で守る――。
この2つのバランスが、変動の激しい時代を乗り切る鍵になる。

 

ただし忘れてはいけない。
金は人が「価値がある」と信じているから価値がある。
そこには経済的な生産性はない。

 

一方、企業は日々利益を生み、雇用を支え、社会を動かしている。
合理的な投資とは、こうした“生産性のあるもの”に時間を味方につけて賭けることだ。

だからこそ、筆者の基本スタイルはこうだ。

円+オルカン(もしくはS&P500)。
これを軸に、愚直に積み上げていくことをおすすめする。

そして、その隣に静かに輝く少量のゴールドを――。
それが、不確実な時代における“成熟した投資家の構え”である。

 

背景には、世界的なインフレ・財政赤字地政学リスク・円安など、複数の要因が絡み合っている。
特に日本では長期金利上昇や円安の進行により、「資産を守りたい」という意識が高まっている。

だが、こうしたニュースを見て「今こそ金を買うべきか?」と焦る前に理解すべきことがある。

金は**“攻める資産”ではなく、“守る資産”**だということだ。


 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

この記事が少しでも参考になれば幸いです。

 

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