
金価格が過去最高を更新。今こそ知りたい「ゴールドの正しい扱い方」。分散投資の一部として金をどう持つべきか、日経マネー風に徹底解説。円+オルカン+少量の金という最適ポートフォリオを提案。
ゴールドは“守りの資産”──分散投資の中でどう位置づけるか
もくじ
- ゴールドは“守りの資産”──分散投資の中でどう位置づけるか
- 1. いま、なぜ金が注目されているのか
- 2. ゴールドの本質 ― 通貨価値の裏づけを補う「無国籍の資産」
- 3. 価格高騰の背景 ― 不安という燃料
- 4. ゴールド投資の位置づけ ― 攻めではなく「静かな保険」
- 5. ゴールドの保有手段と特徴
- 6. どのくらい持つべきか ― バランスがすべて
- 7. 税金と出口戦略 ― 売るタイミングを意識する
- 8. 金は「守り」、株は「攻め」 ― 生産性の違いを理解する
- 9. 結論 ― 円+オルカン(またはS&P500)を軸に、金は5〜10%で十分
- 10. まとめ ― ゴールドは“ゼロにならない資産”であり、“増やすための資産”ではない
- 11. 編集後記 ― 「増やす」と「守る」の調和を
1. いま、なぜ金が注目されているのか
2025年秋、金価格は1gあたり2万1,000円を超え、史上最高値を更新した。
わずか5年前(2020年)には7,000円前後だったことを考えると、約3倍の上昇である。
田中貴金属の銀座店では購入希望者が殺到し、特に50g以下の小型地金は販売一時停止となる異例の事態となった。
「金を買いたくても買えない」という状況は、バブル期以来ほとんど例がない。
ニュース映像では、銀座本店の前に長蛇の列ができ、
「値上がりしても今のうちに買っておきたい」という声が相次いだ。
それだけ今、人々の間で**“金=安全資産”への信頼が急速に高まっている**という証拠だ
金価格の推移を示した5年チャート

背景には、世界的なインフレ・財政赤字・地政学リスク・円安など、複数の要因が絡み合っている。
日本だけでなく世界各国で、中央銀行までもがゴールドを積み増している。
特に日本では長期金利上昇や円安の進行により、「資産を守りたい」という意識が高まっている。
しかし、こうした状況を見るときこそ冷静さが求められる。
金は確かに「安全資産」ではあるが、“増やす資産”ではない。
短期的な値上がりを追うのではなく、分散投資の中でどう位置づけるかを考えることが大切だ。
金は**“攻める資産”ではなく、“守る資産”**だということだ。
2. ゴールドの本質 ― 通貨価値の裏づけを補う「無国籍の資産」
金には配当も利息もない。
にもかかわらず数千年にわたり価値を保ち続けてきたのは、それが「信用の最後の砦」だからである。
通貨は国の信用に基づく「約束の紙」だ。
だが、その発行主体である政府が債務を膨らませ、中央銀行が通貨を増刷すれば、約束の価値は薄れる。
金はそうした“約束の世界”から独立して存在する、数少ない「実物の基軸」である。
金の本質的価値とは、**他の資産が揺らいだときに機能する“安全弁”**だ。
株式や債券が暴落しても、金は違う方向に動くことが多い。
この「相関の低さ」が、分散投資において金が持つ最大の意義といえる。
3. 価格高騰の背景 ― 不安という燃料
直近の金高騰を支えているのは、次の5つの要因だ。
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インフレ:通貨価値の下落に対する防衛需要
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財政不安:先進国の債務膨張による信用不安
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地政学リスク:戦争・紛争・災害などのリスク拡大
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円安:ドル建て価格に円安が上乗せされ、円建て金価格を押し上げ
言い換えれば、“恐れ”が金の価格を押し上げている。
景気が良く、世界が安定しているとき、金はあまり買われない。
つまり、金は「希望」ではなく「不安」に支えられる資産だ。
4. ゴールド投資の位置づけ ― 攻めではなく「静かな保険」
株式や不動産のような成長性はないが、通貨・債券・株のいずれにも属さない“独立した存在”である。
ゆえに、他の資産が危機に陥ったとき、ポートフォリオ全体のダメージを緩和してくれる。
たとえるなら、金は「資産の防火壁」であり、保険に近い。
火事が起きなければ価値は感じにくいが、いざという時に頼りになる。
長期的な資産形成においても、「増やす」と「守る」の両輪が重要であり、金は後者の役割を担う。
5. ゴールドの保有手段と特徴
6. どのくらい持つべきか ― バランスがすべて
金融アナリストの多くは、**総資産の5〜10%**を目安に金を組み込むことを推奨している。
これは「暴落時の下支え」と「過剰な機会損失の防止」のバランスを取るためだ。
たとえば資産1,000万円の場合、金50〜100万円が現実的だろう。
残りを株式・債券・現預金などに振り分け、周期的にリバランスを行うことで全体のリスクを管理する。
このように、金は“主役”ではなく“脇役”として光る。
資産全体を俯瞰して、「不安を静めるパート」をどの程度置くかがポイントである。
7. 税金と出口戦略 ― 売るタイミングを意識する
金の売却益には「譲渡所得税」がかかる。
年間50万円までの特別控除があるため、少額で分散して売却するのが得策だ。
また、1kgバーを一気に売ると税負担が大きくなるため、小型地金や少額積立が人気を集めている。
こうした出口をあらかじめ設計することが、長期保有のストレスを軽減する。
8. 金は「守り」、株は「攻め」 ― 生産性の違いを理解する
ここで大切なのは、金と株の本質的な違いを理解することだ。
金は人々が「価値がある」と信じているから価値がある。
それ自体が利益やキャッシュフローを生むわけではない。
いわば「価値保存の象徴」であり、「経済的な生産性」を持たない資産だ。
一方、株式会社は人と技術を使って価値を生み出す。
企業が利益を上げるたび、株主にも富が還元される。
つまり、株式は**経済の成長を取り込む“生産資産”**である。
長期で資産を増やしたいなら、成長性のある資産を持つことが欠かせない。
その意味で、**ゴールドは“主役ではなく、脇役としての守り”**が最適なポジションだ。
9. 結論 ― 円+オルカン(またはS&P500)を軸に、金は5〜10%で十分
資産形成の基本構造は、
これが「成長を取り込みながら、通貨変動にも強い」中核になる。
そこに、ゴールドを5〜10%だけ添える。
この比率が、“不安に強く、成長も取り込める”最適解のひとつだ。
いくら金価格が上がっても、「値上がりしているから買う」はギャンブルと同じ。
長期的な資産設計の中で、冷静に、構造として組み込むのが正しい使い方である。
10. まとめ ― ゴールドは“ゼロにならない資産”であり、“増やすための資産”ではない

11. 編集後記 ― 「増やす」と「守る」の調和を
投資の世界では、「成長の取り込み」と「価値の保存」は車の両輪だ。
株式で増やし、金で守る――。
この2つのバランスが、変動の激しい時代を乗り切る鍵になる。
ただし忘れてはいけない。
金は人が「価値がある」と信じているから価値がある。
そこには経済的な生産性はない。
一方、企業は日々利益を生み、雇用を支え、社会を動かしている。
合理的な投資とは、こうした“生産性のあるもの”に時間を味方につけて賭けることだ。
だからこそ、筆者の基本スタイルはこうだ。
円+オルカン(もしくはS&P500)。
これを軸に、愚直に積み上げていくことをおすすめする。
そして、その隣に静かに輝く少量のゴールドを――。
それが、不確実な時代における“成熟した投資家の構え”である。
背景には、世界的なインフレ・財政赤字・地政学リスク・円安など、複数の要因が絡み合っている。
特に日本では長期金利上昇や円安の進行により、「資産を守りたい」という意識が高まっている。
だが、こうしたニュースを見て「今こそ金を買うべきか?」と焦る前に理解すべきことがある。
金は**“攻める資産”ではなく、“守る資産”**だということだ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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