
日本郵便は2025年も赤字決算に転落。郵便物減少・2024年問題・人手不足など原因を初心者向けにわかりやすく解説。日本郵政グループ全体との違いや今後の課題も紹介します。
〜📮 日本郵便の大赤字はなぜ?ニュースを初心者にもわかりやすく解説〜
もくじ
- 〜📮 日本郵便の大赤字はなぜ?ニュースを初心者にもわかりやすく解説〜
- 📉 2. 日本郵便の業績(2024年・2025年)
- 💴 3. 日本郵政グループ全体は黒字
- 📊 4. 2020〜2025年の業績推移
- ⚠️ 5. 赤字の主な原因
- 🚨 6. 最近のトラブル
- 🏢 7. 不動産事業で支える構図
- 🔮 8. 今後の課題
- 🌱 9. まとめ
✉️ 1. はじめに
「日本郵便が赤字に転落」というニュースを見た方も多いのではないでしょうか。郵便局は全国どこにでもあり、私たちの生活に深く関わっている存在です。
でも、なぜ赤字が続いているのか?そしてグループ全体で見れば黒字なのはなぜなのか?
この記事では、初心者でも理解できるように、日本郵便の経営状況をわかりやすく解説します。
📉 2. 日本郵便の業績(2024年・2025年)
2024年度:686億円の赤字と純利益72億円
2024年3月期
郵便・物流事業は686億円の赤字。ただし不動産の利益などで、純利益は72億円の黒字。
日本郵便の2024年3月期決算資料によると、郵便・物流事業の営業収益は取扱数量の減少や年賀はがきの減収などで前期比808億円減少しjapanpost.jp、一方人件費や集配運送委託費が増加したため営業費用は207億円増加しましたjapanpost.jp。
その結果、営業損益は前期比1,016億円減少し686億円の赤字japanpost.jpとなりました。
それでも純利益を72億円の黒字に保てたのは、郵便局窓口事業や不動産事業が支えたためです。窓口部門では不動産販売収入が増加し、営業利益は前期比236億円増加の729億円となっていますjapanpost.jp。
不動産事業は東京駅前のJPタワーや名古屋・KITTE名古屋、広島JPビルディング、さらに2023年竣工の麻布台ヒルズ森JPタワーなどが稼働率向上により安定収益を生んでおり、グループの収益の柱の一つとなっていますyuseimineika.go.jp。
2025年度:383億円の赤字と純損益の赤字転落

2025年3月期
郵便・物流事業の赤字は383億円まで縮小。でも日本郵便全体では42億円の赤字に転落。
2025年3月期の会社説明会資料では、郵便・物流事業セグメントの営業損益は前期より304億円改善したものの383億円の赤字japanpost.jpと報告されています。
郵便料金の値上げやサービス見直しで収益は増えましたが、依然として赤字幅は大きく、郵便事業単体ではまだ黒字化していません。
さらに、日本郵便(連結)の当期純損益は42億円の赤字japanpost.jpで、1985年の国鉄改革以来といわれる赤字転落です。
この背景には郵便窓口手数料の減少や物流費用の高止まりがあり、不動産事業の営業利益が139億円japanpost.jpに減少したことも影響しました。
つまり「郵便や物流そのもの」では黒字化できず、不動産や他の事業に頼っている状態です。
💴 3. 日本郵政グループ全体は黒字
赤字が目立つ一方で、日本郵政グループ全体では大きな黒字です。
ゆうちょ銀行 → 4,143億円の利益
かんぽ生命 → 1,234億円の利益
この金融部門が、郵便事業の赤字を補っています。
ここで知っておきたいのが「日本郵便」と「日本郵政」の違いです。
日本郵便:郵便・ゆうパックを担当(赤字)
日本郵政:グループ本体。金融や不動産も含む(黒字)
混同されがちですが、日本郵便は郵便・物流事業を担当する子会社であり、ゆうちょ銀行やかんぽ生命を含む持株会社が日本郵政です。
日本郵便は国からユニバーサルサービスの提供が義務付けられており、全国一律料金で郵便を届けなければなりません。そのため収益性よりも公共性が優先され、過疎地の郵便局を維持する責務があります。
総務省資料によると、日本郵便は全国約2.4万局のネットワークを持ち、各市町村に最低1局を設置する義務yuseimineika.go.jpがあり、過疎地域でも撤退ができません。
このネットワーク維持がコスト負担となり、赤字の要因の一つになっています。
📊 4. 2020〜2025年の業績推移
2022年までは黒字でしたが、2023年以降は急落して赤字が続いています。
| 年度 | 郵便・物流事業 営業損益(億円) | 前期比増減(億円) | 日本郵便 当期純損益(億円) |
|---|---|---|---|
| 2020/3期 | 1,475 | - | - |
| 2021/3期 | 1,237 | △238 | 534 |
| 2022/3期 | 1,022 | △215 | - |
| 2023/3期 | 330 | △692 | 約620 |
| 2024/3期 | △686 | △1,016 | 72 |
| 2025/3期 | △383 | +303 | △42 |
※2020〜2022年度の純損益データは公表資料が限定的なため推定値または欠損とした。
表からも分かる通り、郵便・物流事業は2022年まで黒字だったものの、2023年度に大きく利益が減少し、2024年度には赤字に転落yuseimineika.go.jp、2025年度も赤字が続いています。赤字幅は改善しましたが、黒字化にはほど遠い状況です。
⚠️ 5. 赤字の主な原因
では、なぜ赤字が増えているのでしょうか?大きく4つの理由があります。
郵便物が減った
最大の要因は郵便物の減少です。
総務省の資料では、インターネットやSNSの普及、各種請求書のWeb化、企業の通信費・販促費削減、個人間通信の減少などにより郵便物数が大幅に減少していると指摘していますyuseimineika.go.jp。
国内の郵便物数は2001年度の267億通をピークに2023年度には175億通へ34.5%減少しましたyuseimineika.go.jp。収益の柱だった普通郵便やはがきが減り、荷物分野へシフトしても補いきれていません。
2024年問題(働き方改革)
もう一つの大きな要因が、いわゆる2024年問題です。
働き方改革関連法により2024年4月からトラックドライバーの時間外労働に上限が設けられ、長距離輸送の運行時間が短縮されました。
日本郵便はこれに対応するため、ゆうパックや速達郵便など長距離便を中継輸送に切り替え、お届け日数の見直しや配達希望時間帯「20時-21時」の廃止を実施していますyuseimineika.go.jp。
また拘束時間の上限短縮に伴い便の分割や中継施設での乗継が必要となり、コスト増とサービス水準低下の両方を招いていますyuseimineika.go.jp。
外注費の増加
電子商取引の拡大で宅配荷物が増えた半面、自社配送だけでは対応しきれず外部委託費が増加しました。
2024年決算資料では集配運送委託費が139億円増加し、その他経費も143億円増えたと説明されていますjapanpost.jp。一方で働き方改革に伴う人員削減が進み、人件費は64億円増加にとどまりましたjapanpost.jp。
配達要員の確保と外注費増加が収益を圧迫しています。
地方ネットワークの維持
日本郵便は法律でユニバーサルサービスの提供が義務付けられており、全国約2万4千の郵便局ネットワークを維持しなければなりませんyuseimineika.go.jp。
過疎地でも民営化法施行時の水準を維持する責務があるため、不採算局の閉鎖や撤退が難しく、高コスト構造となっています。

🚨 6. 最近のトラブル
- 2025年1月、小野郵便局で酒気帯び確認を伴う法定点呼が実施されないまま車両が出発していたことが発覚しました
- その後の調査で多数の郵便局で点呼不備が見つかり、国土交通省は6月に一般貨物自動車運送事業の許可取消を通知しました
- 取消後は約330局で使用している1トン以上の車両約2,500台が5年間使用できなくなると公表されていますjapanpost.jp。日本郵便は配達業務を他社に委託するなどで対応する方針ですが、内部統制の甘さが問われる事件であり、経営への信頼を損ないました
🏢 7. 不動産事業で支える構図
- 前述の通り、日本郵便はこれまで不動産事業の利益で郵便事業の赤字を補ってきました。
- JPタワーやKITTE名古屋、麻布台ヒルズ森JPタワーなど大型物件の賃料収入により、不動産事業セグメントの営業利益は2024年度139億円japanpost.jpを計上しました。
- 郵政グループの中期計画では、2025年度に不動産事業の営業利益150億円程度を目指すと示されていますyuseimineika.go.jp。
しかし、不動産市況も建設費高騰や金利上昇の影響を受けており、郵便・物流の赤字を長期的に補填できるかは不透明です。
🔮 8. 今後の課題
日本郵便の赤字問題は、一時的なコスト増だけではなく、郵便物減少という構造変化とユニバーサルサービス義務に起因しています。今後の課題として以下が挙げられます。
- 地方ネットワークの再構築
人口減少や過疎化が進む地域では、従来の物理的ネットワーク維持が財政的に困難になりつつあります。自治体や民間との協業による共同窓口やサービス統合など、柔軟なネットワーク再編が必要です。 - デジタル時代への対応
郵便物減少を前提に、eコマースやラストマイル配送、デジタル郵便など新たな収益源を開拓する必要があります。総務省の資料でもデータ活用やドローン配送などのDX施策が紹介されていますyuseimineika.go.jp。 - ガバナンスとコンプライアンスの強化
点呼不備問題は根深い組織風土の表れであり、再発防止策の徹底と内部統制の強化が求められますjapanpost.jp。 - グループ内補助のあり方
銀行・保険部門や不動産事業の黒字によって郵便事業の赤字を補填する構図が続けば、経営改革のインセンティブが薄れかねません。郵便事業単体で採算を取る方法や、公的支援のあり方を議論する必要があります。

🌱 9. まとめ
日本郵便の赤字問題は、単なる業績の良し悪しではなく、日本社会全体のデジタル化と人口構造の変化が生み出した課題と言えます。
近年の決算資料では、郵便・物流事業の赤字が続く一方で金融部門が高収益を維持し、グループ全体では黒字を確保していることが示されています。
(2025年3月期決算資料:japanpost.jpjapanpost.jp)
このバランスに甘んじることなく、地方ネットワークの維持とサービス水準の両立、デジタル時代に対応した事業モデルへの転換、そしてガバナンスの強化を進めることが求められています。
今後も郵便事業が国民の基盤として持続可能であるために、私たち自身もその現状と課題を理解し、議論していくことが必要でしょう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
この記事が少しでも参考になれば幸いです✨