
日本と世界の景気指標や株価の動きをもとに、9月の投資トピックを初心者向けにやさしく解説。インデックス運用と高配当株投資のポイントを総まとめ。
〜株式投資に役立つ9月の投資トピック総まとめ【インデックス・高配当】〜
もくじ
はじめに
今月は「インデックス投資」と「高配当株投資」に焦点を当てて、9月の経済ニュースを総ざらいします。
日本と海外の景気指標を整理し、私たちの仕事や生活にどう影響するのか、そして長期投資のスタンスをどう考えるべきかを分かりやすくまとめました。
難しい用語はかみくだきながら進めるので初心者の方も安心してください😊
日本の経済状況
1. 株価指数の推移
まずは年初来の成績を振り返りましょう。9月末時点(9月30日)では以下のような結果になりました(カッコ内は年初来騰落率)。
| 指数/ETF | 年初来リターン(%) | 概要 |
|---|---|---|
| グロース250連動ETF | +18.64 | グロース市場250指数に連動するETF。4月の「関税ショック」で一時年初来−約20%まで沈んだものの、その後は大幅に回復。 |
| REIT連動ETF | +14.99 | J‑REIT指数連動のETF。安定した分配金が魅力。 |
| 日経平均株価 | +14.31 | 9月25日に終値ベースで4万5754円と史上最高値を更新:contentReference[oaicite:0]{index=0}。 |
| TOPIX | +13.83 | 東証プライム市場の広範な企業をカバーする指数で、年初来で大きく伸びています。 |
年初来のパフォーマンスを図示すると、グロース株が頭一つ抜けていることがわかります。

9月単月の値動きは以下の通りです。日経平均は関税交渉の進展や新政権への期待から+6.50%と大幅上昇。一方、グロース株は−4.26%と調整しました。
| 指数/ETF | 9月リターン(%) | コメント |
|---|---|---|
| 日経平均株価 | +6.50 | 9月25日に終値ベースの史上最高値を更新し、月間で堅調。 |
| TOPIX | +2.43 | 銀行株や輸出関連の追い風で小幅高。 |
| REIT連動ETF | −0.67 | 分配金利回り低下や金利上昇の影響でやや下落。 |
| グロース250連動ETF | −4.26 | 米金利上昇や世界景気への警戒感からグロース株が調整。 |

ポイント: 4月にはトランプ政権による追加関税で日本株が大きく揺さぶられましたが、その後は「気にせず積み立てる」姿勢が報われています。
短期的には上下動があっても、長期目線で淡々と続けることの大切さが改めて確認できました。
2. その他の指数から見る景気
株価だけでは生活実感を測れません。ここでは政府の月例経済報告や日銀短観など、景気を測る指標を整理します。
月例経済報告

政府の9月の月例経済報告では、景気の基調判断を「緩やかに回復している」と維持しつつも、米国の通商政策が自動車産業を中心に影響していると明記しました。
個人消費と設備投資の評価は引き上げられましたが、対米輸出は前月比8.2%減、特に自動車輸出が6.5%減と大きく落ち込み、製造業の利益は前年同期比11.5%減と厳しい数字になっています。
日銀短観(9月調査)

日銀の9月短観では、大企業製造業の業況判断指数(DI)が+14に上昇し2期連続の改善、大企業非製造業は+34で横ばいでした。
先行き指数は悪化を示し、中小企業製造業の弱さが目立ちますが、2025年度の大企業の設備投資計画は前年比+12.5%と強気です。
景気ウォッチャー調査

景気に敏感な小売業やタクシー運転手などへのアンケートである景気ウォッチャー調査の8月結果によると、現状判断指数は46.7で前月から1.5ポイント上昇しましたが、景気の分かれ目となる50を下回っています。
2〜3か月後の先行指数も47.5と弱めの水準で、物価上昇や米国通商政策への警戒感が伺えます。
先行指数の推移

消費者物価指数(CPI)

8月のコアCPIは前年同月比+2.7%となり、前年7月の3.1%から伸び率が鈍化しました。
電気・ガス補助金やコメ価格の上昇ペース鈍化が押し下げ要因で、エネルギーを含まないコアコアCPIは+3.3%と依然高水準です。
実質賃金

7月の実質賃金は前年比+0.5%と7か月ぶりにプラスに転じました。
現金給与総額は平均41万9668円で4.1%増、基本給は2.6%増、ボーナスは7.9%増と夏季賞与が貢献しています。
ただし、物価上昇率(3.6%)が高いため、ボーナス要因を除いた実質賃金はマイナスで、生活が苦しいという声が多い状況です。
まとめ(国内景気)
- 株価は好調: TOPIXは年初来で約+14%と最高値を更新。グロース株も大きく回復。
- 企業マインドは強気: 日銀短観では製造業・非製造業ともにプラス圏。設備投資計画も二桁増。
- 生活者マインドは弱い: 景気ウォッチャー調査では50を下回り、実質賃金もボーナスを除けばマイナス。物価は上昇が続き、生活者の負担感は大きい。
- 景気判断は“緩やかな回復”: 月例経済報告では回復基調を維持しつつ、米国の通商政策が自動車産業に影響していることを明記し、海外リスクに警戒を促しています。
3. 9月の国内トピックス
(1) 石破首相辞任と新政権誕生
9月7日、石破茂首相が米国との関税交渉が一区切り付いたことを理由に辞任を表明しました。市場では次期政権の経済対策への期待が高まり、日経平均は連日最高値を更新しました。
10月4日の自民党総裁選では高市早苗氏が決選投票で勝利し、初の女性総裁となりました。高市氏は物価高への対策や外国人労働者政策に重点を置く姿勢を示し、税額控除や政府支出拡大など積極財政を掲げています。
市場は彼女の政策を好感し、新政権への期待が株価の追い風となりました。
(2) 日銀のETF売却決定
9月19日の金融政策決定会合で、日本銀行は保有するETFとJ‑REITの売却を開始することを全会一致で決定しました。売却ペースは簿価ベースで年間3300億円、時価に換算すると約6200億円程度であり、すべてを売却するには100年以上かかる見通しです。
政策金利は現状維持としつつも、金融緩和の出口に向けた議論が始まっていることが示されました。
この発表は市場にとってサプライズで、短期的には日経平均が下落しましたが、売却ペースが極めて緩やかであることから長期的な影響は限定的と見られます。
海外の経済状況
1. 株価指数の推移(G7と主要国)

米国だけでなく、今年は世界的に株価が好調です。
Advisor Perspectivesのレポートによると、9月末時点で香港ハンセン指数が+35.7%、カナダのS&P/TSX指数が+20.4%、中国の上海総合指数が+18.4%とトップクラスの上昇率を記録しました。一方、インドのSENSEXは+0.5%と小幅な伸びにとどまりました。
米国のS&P500指数は年初来で+14.1%となり、10月2日時点で27回目の終値ベースの史上最高値を記録しています。
日本のTOPIXは+13.83%とG7の中でも上位に位置し、欧州のDAXやFTSE100も10%前後の上昇となっています。インデックス投資においては地理を分散することでほぼ全地域の恩恵を受けられることがわかります。
2. ゴールドと債券ETFの値動き
ゴールド
ゴールドの値動き

今年は金価格の高騰が話題になりました。バージニア大学ダーデン校のコラムによると、金価格は9月下旬に史上初めて1オンス3,800ドルを突破し、年初から約45%も上昇しました。
この2年間で金は2,000ドルからほぼ4,000ドルへと倍増し、2025年は1979年以来の好パフォーマンスとなっています。
金は中央銀行の外貨準備に占める比率が27%に達しており、ドルへの依存を避けたい国々が金を買い増していることも背景にあります。
投資への示唆: 金は「安全資産」と呼ばれることが多いものの、ボラティリティが高く短期間で大きく動きます。年初来で株を凌ぐリターンを得た反面、逆に大きく下落するリスクも抱える点に注意が必要です。
米国債券ETF(AGG・LQD・HYG)と金利
<AGG>のチャート

<LQD>のチャート

<HYG>のチャート

9月の米国長期金利は約4.15%とやや低下しましたが、世界的には30年物国債利回りが5%前後に上昇し、英国の長期金利は5.7%、フランスも4.49%と高水準になりました。
短期では金利が低下していることもあり、総合債券ETF(AGG)は年初来+3.46%、投資適格社債ETF(LQD)は+4.33%、ハイイールド債ETF(HYG)は+3.23%と小幅な上昇が見られました(数値は9月末時点、各社開示データより)。
金利が今後低下するという見方が強いため、債券価格が上昇する余地があります。ただし、為替リスクや発行体の信用リスクに注意し、分散投資の一部として取り入れるのが基本です。
高配当株ETF(VYM・HDV・SPYDなど)
VYM・HDV・SPYDの年初来のチャート

米国の高配当株ETFは、株価の上昇に伴い分配金利回りが低下しています。
代表的な高配当ETFの現在利回りは、VYMが約2.5%、HDVが約3.1%、SPYDが約4.5%といった水準です(各社ファクトシートから概算)。年初来の値動きは概ね+1%〜+10%程度で、配当も含めるとS&P500に近いリターンにはなりますが、割安感は薄れてきました。
高配当株を買い増すなら、株式全体が大きく売られる「バーゲンセール」を待つスタンスが無難でしょう。
3. 9月の海外トピックス
(1) FOMC 0.25%利下げ
米連邦公開市場委員会(FOMC)は9月17日の会合で政策金利を0.25ポイント引き下げ、誘導目標を4.0〜4.25%に設定しました。雇用市場の軟化が理由で、12月以来初めての利下げとなります。
パウエル議長はインフレ率の高さに注意を払いつつも「最大雇用を守るために追加利下げの可能性がある」と表明し、年内あと数回の利下げが示唆されています。利下げは株式市場にとって追い風ですが、一方でインフレ再燃リスクもあり、FRBは難しい舵取りを迫られています。

(2) 超長期国債の利回り上昇

フォーチュン誌は、米国・英国・フランスを含む先進国で30年超の国債利回りが大きく上昇していると報じています。米国30年債は5%近く、英国は5.7%、フランスは4.49%と、10年以上ぶりの高水準です。
これは財政赤字拡大への懸念や国債大量発行が原因で、長期債への需要が低下しているためです。一方で、米国5年債利回りは3.74%と低下しており、短期と長期で金利差が拡大しています。

まとめ:投資ポジションについて
今年の9月までのデータを見る限り、リスクを取って株式に投資してきた人が報われる状況が続いています。
日本株や世界株は概ね2桁の上昇を記録し、インフレ率は高止まりしているものの景気は緩やかに回復しています。企業の景況感は良好ですが、生活者は物価高で苦しいという二面性がある点にも注目です。
インデックス投資のスタンス
- 継続が王道: 株価は短期的に上下しますが、長期的には右肩上がり。トランプ関税ショックで−20%まで下がっても、淡々と積み立てれば年末にはプラスに転じました。
- 地域分散が効く: 2025年は香港やカナダ、ドイツが米国を上回るパフォーマンスを見せています。オルカン(全世界株)や先進国株インデックスなど、地域を分散した投資ならどこかの地域の好調さを取り込めます。
- 今後のリスク: 米国の金利動向や通商政策、中国不動産市場など不確実性は残っています。急な暴落が来ても慌てず、余剰資金で淡々と積み立てる姿勢が重要です。
高配当株投資のスタンス

- 利回りは低下気味: 株価上昇のためHDVやVYMの利回りは過去平均より低く、債券の利回りと比べても魅力度が下がっています。SPYDの利回りは比較的高いものの、値動きは小幅であるため、バーゲンセールを待つのが無難です。
- 国内高配当株は選別が重要: 日本株は上昇が続き配当利回りが低下しており、魅力的な銘柄は減っています。PERが高く配当性向も上がっているため、今は過度に買い集める時期ではなく、配当+増配が期待できる銘柄に絞ることが必要です。
- 債券との比較: 米国債の利回りが4%前後まで上昇したため、インカム狙いであれば高配当株より債券が有利な局面もあります。債券は金利が下がれば価格が上がる「キャピタル狙い」も期待できるので、ポートフォリオに一部組み込むのも良いでしょう。
おわりに
9月は国内外ともに大きなニュースが多く、特に日本では首相交代と日銀のETF売却決定が注目を集めました。
とはいえ、投資の基本は変わりません。短期的なニュースに惑わされず、長期目線での資産形成を心がけましょう。
資本主義社会では「リスクを取らないリスク」が最大の敵です。余裕資金の範囲でインデックス投資をコツコツ続け、バーゲンセール時には高配当株や債券を拾う。これが今月のまとめとしておすすめできる投資スタンスです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
この記事が少しでも参考になれば幸いです✨