
賃貸住宅の家賃引き上げ相談が急増中!普通借家契約では合意なしに値上げはできません。本記事では、拒否・承諾・住み替えの3つの選択肢と正しい対処法をわかりやすく解説します。
〜【恐れる必要なし】強引な家賃引き上げトラブルの正しい対処法 〜
もくじ
- はじめに
- ① 家賃引き上げを巡るトラブルの現状(相談数は右肩上がり)
- ② なぜ、家賃引き上げトラブルが増えているのか?
- ③ 普通借家契約の基本ルールと法律的な裏付け
- ④ 恐れる必要なし!値上げ通知は断れる
- ⑤ ただし「完全拒否」で終わらないケースもある
- ⑥ 値上げ通知が届いたら取るべき3つのステップ
- ⑦ 家賃引き上げに怯えて「焦って家を買う」のは危険
- ⑧ 値上げを「承諾する」という選択肢もある
- まとめ
はじめに
最近、「家主から強引に家賃引き上げを迫られた」という相談が全国の消費生活センターに急増しています。
「家賃が上がるのが怖いから、早く家を買わなければ」と焦る方も少なくありません。
しかし、結論から言えば――強引な家賃引き上げに恐れる必要はありません。借主には断る権利があるからです。
本記事では、家賃引き上げトラブルの実態と背景、そして一方的な通知にどう対処すべきかを法律的な裏付けを交えつつ解説します。

① 家賃引き上げを巡るトラブルの現状(相談数は右肩上がり)
消費生活センターへの相談件数の推移
- 2020年:326件
- 2024年:662件(わずか4年で倍増)
- 2025年:1〜3月だけで193件(年間ペースではさらに増加見込み)
このデータからも分かる通り、家賃引き上げに関するトラブルは年々増加しています。
典型的な相談例
- 「家主から一方的に『来月から家賃を上げます』と通知を受けた」
- 「納得いかないが、揉めたくないので仕方なく受け入れた」
- 「強引に出ていけと言われ、泣く泣く引っ越した」
特に最近では、外国人オーナーによる強引な退去要求も確認されており、社会問題化しつつあります。
② なぜ、家賃引き上げトラブルが増えているのか?
背景には、家賃相場の高騰があります。
家賃相場高騰の主な理由
このように、オーナー側にも「値上げをしたい事情」が存在します。
ただし、その「事情」と「強引な値上げ」はまったく別問題です。
③ 普通借家契約の基本ルールと法律的な裏付け
日本の賃貸住宅の多くは 「普通借家契約」 に基づいています。
この契約は、借主の住まいを守るために 「借地借家法」 という法律で手厚く保護されています。
借地借家法とは?
借地借家法は、土地や建物を借りる人の権利を守るための特別な法律です。
なぜ特別なのか?
それは、住まいが生活の基盤であり、家主の一方的な都合で追い出されたり、急に家賃を吊り上げられたりしないようにするためです。
借地借家法 第32条の要点
この法律の第32条には、家賃の増減について次のように書かれています(要点をわかりやすく整理):
- 家賃が 経済事情や近隣相場と比べて不相当になった場合、家主・借主どちらからでも増額や減額の請求ができる。
- ただし、一方的に決められるわけではなく、双方の合意が必要。
- 合意できない場合は、最終的に裁判所が判断する。
つまり――
家主が「来月から家賃を上げます」と通知してきても、借主が納得しなければ値上げは成立しません。
そして、借主がこれまで通りの家賃を支払い続けていれば、強制的に退去させられることは法律上あり得ないのです。
借主に有利すぎる?大家にとっては「悪夢の法律」
借地借家法は、借主にとってはとても安心できる強力な味方ですが、裏を返せば、大家さんにとっては「借主を簡単に追い出せない」「値上げもスムーズにできない」という厳しい制約となります。
そのため「借地借家法は借主には天国、大家にとっては悪夢のような法律」と言われることもあるのです。
| 視点 | 借主(入居者)のメリット | 大家(オーナー)のデメリット |
|---|---|---|
| 契約の安定性 | 一方的に追い出されない | 簡単に退去させられない |
| 家賃の増減 | 不当な値上げは拒否できる | 値上げがスムーズにできない |
| 生活の安心感 | 法律により強力に保護される | 契約更新を拒否するのが難しい |
| 交渉の余地 | 合意がなければ条件変更されない | 合意が得られなければ収益が上がらない |
④ 恐れる必要なし!値上げ通知は断れる
家主からの通知文例としては、
- 「原則同意してもらっています」
- 「来月から家賃が上がります」
といったものがあります。
しかし、これらは単なる要請にすぎません。
借主が「同意できません」と伝え、これまで通りの家賃を支払い続ければ問題ありません。

⑤ ただし「完全拒否」で終わらないケースもある
家主が裁判を起こす場合
家主が「相場より安い」と判断すれば、裁判で値上げを請求する場合もあります。
ただし、その際には**「算定根拠」を提示する必要**があり、家主側が合理的な理由を示せなければ認められません。
値上げが認められる可能性があるケース
周辺の同条件物件と比べて極端に家賃が安い場合
築年数や設備が改善された場合(リフォーム・リノベーションなど)
つまり、裁判になったとしても必ず値上げされるわけではなく、あくまで「合理的理由」が必要です。
⑥ 値上げ通知が届いたら取るべき3つのステップ
ステップ1:冷静になる
「退去させられるのでは?」と焦らず、まずは落ち着きましょう。
ステップ2:算定根拠を確認する
- 近隣の同条件物件と比べて妥当か?
- 建物や設備に改善はあったか?
ステップ3:消費生活センターに相談する
専門のアドバイザーが相談に乗ってくれます。
(相談件数が増えているのも、裏を返せば「気軽に相談する人が増えている」ということです。)
⑦ 家賃引き上げに怯えて「焦って家を買う」のは危険
「家賃が上がるくらいなら、家を買ったほうがいいのでは?」
そう考える人も増えていますが、これは短絡的です。
- 住宅購入には数千万円単位の負債を抱えるリスク
- 固定資産税や修繕費など「持ち家ならではの出費」も発生
- 相場の一時的な上昇で焦って決断するのは危険
つまり、家賃引き上げを恐れて不動産購入を急ぐのは避けるべきです。
⑧ 値上げを「承諾する」という選択肢もある
本記事では「強引な家賃引き上げ通知は恐れる必要なし」とお伝えしてきましたが、必ずしも「拒否すべき」という話ではありません。
もし大家さんが提示する値上げの根拠が合理的で、納得できると感じるのであれば、承諾するのも立派な選択肢です。
なぜなら、借地借家法のルールは「双方の合意があれば成立する」という仕組みだからです。
合意が成立する背景にある現実
現在の日本ではインフレが進行し、大家さんの負担も年々重くなっています。
こうした事情を考えれば、家主側にもやむを得ない事情があることは事実です。
そのため、お互いの立場を理解し合い、歩み寄ることも大切だといえるでしょう。
借主が意識すべき視点
- 賃貸物件は生活スタイルに合わせて 住み替えが容易 というメリットがある
- できるだけ コスパの良い物件に住み、浮いたお金を蓄財に回す のが賢明
- ただし、理不尽な値上げ通知を受けた場合は拒否できる ことを忘れない
知識を持っていれば、不要に不安を抱く必要はありません。
重要なのは、法律に守られている安心感を理解しつつ、冷静に・慎重に判断することです。

まとめ
賃貸住宅の家賃引き上げトラブルは年々増加しています。
背景には家賃相場の高騰があり、オーナー側の事情もありますが、借主が一方的に不利になる必要はありません。
- 普通借家契約では合意がなければ値上げできない
- 通知が来ても拒否すれば成立しない
- 裁判になっても合理的理由が必要
- 借主は借地借家法により手厚く保護されている
つまり、強引な家賃引き上げを恐れる必要はありません。
借主にとって大切なのは「知識を持ち、落ち着いて判断する」ことです。
- 拒否することもできる
- 納得すれば承諾することもできる
- 住み替えるという柔軟な選択肢もある
理不尽な要求には毅然と対応しつつ、合理的な提案には歩み寄る。
その柔軟さこそ、賃貸暮らしを賢く続ける最大のコツです。
そして、どうしても不安なときは、消費生活センターや弁護士に相談して、自分と家族の生活を守りましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
この記事が少しでも参考になれば幸いです✨