
マイホーム購入と賃貸、どちらが得か?簿記の仕訳で持家と賃貸の経済実態を整理。資産価値や維持費のリアルな数字から、住宅選びに必要な金融リテラシーを解説します。
〜簿記で見る 持家vs賃貸 ― マイホームと賃貸の本当の違いとは?〜
もくじ
- はじめに
- 1. 「家を買う vs 賃貸」はなぜ難しいテーマなのか?
- 2. マイホーム購入を簿記で表すとどうなる?
- 3. 賃貸の場合を簿記で表すと?
- 4. 「売却を前提」で考える理由
- 5. 数字で見る「持家の損得」
- 6. 持家で忘れてはいけない「隠れコスト」
- 7. 賃貸の「隠れコスト」とは?
- 8. 「金融リテラシー」としての簿記的思考
- 9. まとめ
はじめに
住宅は人生の三大支出の一つです。
「マイホームを買うべきか、それとも賃貸で暮らすべきか?」
これは昔から議論が絶えない“永遠のテーマ”といえるでしょう。
今回は、このテーマを 簿記(会計的な考え方) を使って整理してみます。
数字の裏にある経済実態を理解できると、なぜ「売却を前提に考える必要があるのか」、なぜ「賃貸と持家は根本的に違うのか」が腑に落ちるはずです。
1. 「家を買う vs 賃貸」はなぜ難しいテーマなのか?
住宅に関してよく出る議論はこんなものです。
- 家を買えば資産になるのか?
- 賃貸は家賃を払い続けるだけで資産が残らないのか?
- 住宅ローンを払うのと家賃を払うのは同じでは?
確かに一見すると、どちらも「毎月お金を払って住む」点では同じです。
しかし簿記的に見れば、両者はまったく異なる経済状態になります。
なぜなら、家を「買う」と資産と負債が同時に生まれるからです。
一方で「借りる」場合は資産も負債も増えず、支出だけが積み重なっていきます。
2. マイホーム購入を簿記で表すとどうなる?
例えば3,000万円の家を購入し、ローン5,000万円を組んだとしましょう。
そのときの仕訳は次のようになります。
(購入時)
建物 3,000万円 / 借入金 5,000万円
土地 2,000万円
資産(建物・土地)が増えますが、同時に負債(借金)も増えています。
さらに毎年、次のような会計処理が続きます。
(毎年)
減価償却費 / 建物(建物の価値が少しずつ減る)
借入金 / 現金(ローン返済)
支払利息 / 現金(利息支払い)
つまり、住宅を買うというのは「資産」と「負債」を抱え込む行為であり、そこから毎年キャッシュアウト(現金流出)が発生していく仕組みなのです。

3. 賃貸の場合を簿記で表すと?
一方、賃貸住宅に住む場合はどうでしょうか。
(家賃支払時)
家賃 / 現金
これだけです。
資産も負債も増えず、シンプルに毎月の支出があるだけ。
持家と賃貸を簿記で比較すると、以下のような違いが浮かび上がります。
- 持家:資産と負債を同時に抱える → 将来売却で損益が出る
- 賃貸:資産も負債も増えない → 家賃支出のみ
4. 「売却を前提」で考える理由
「いやいや、私は家を一生売るつもりはないから関係ないよ」
こういう声は必ず出ます。
しかし、現実には人生で想定外の出来事が起きる可能性があります。
- リストラで住宅ローンが返せなくなる
- 怪我や病気で収入が減少する
- 転勤で家を離れざるを得なくなる
- 親の介護で実家の近くに住まなければならなくなる
このとき「売らない前提」で考えていた人は、出口戦略を持っていないため苦労します。
つまり、家を買う時点で「売却したらどうなるか」を想定しておかないと、いざという時に困るのです。
簿記的にいうと、資産として計上した建物や土地の価値は「時価」で評価されます。
値下がりすれば純資産(資産-負債)は減り、場合によってはマイナスになることもあるのです。
5. 数字で見る「持家の損得」
例を見てみましょう。
ケース1:値上がりした場合
3,000万円で購入 → 10年後に5,000万円で売却
→ 住んでいた期間の家賃は実質タダ、さらに2,000万円の利益!
ケース2:値下がりしなかった場合
3,000万円で購入 → 10年後に3,000万円で売却
→ 家賃タダで住めたことになる。これも良い。
ケース3:値下がりした場合
3,000万円で購入 → 10年後に2,000万円で売却
→ 実質1,000万円の家賃を払ったことと同じ。さらに固定資産税や修繕費も上乗せされる。
つまり、リセールが良い家・資産価値が高い家を買えるなら持家は有利だが、そうでなければ賃貸のほうが無難という結論になるのです。

6. 持家で忘れてはいけない「隠れコスト」
家を買った人が見落としやすいのが、ローン返済以外の支出です。
- 固定資産税:目安は購入価格の1.4%程度。3,000万円の家なら年間約15万円。10年で150万円。
- 修繕費:外壁塗装や屋根修理、給湯器交換などで10年ごとに200万〜300万円は必要。
- マンションの場合の管理費・修繕積立金:月2万円なら10年で240万円。
仮に一戸建てを買ったとしても、10年間で 最低でも400〜500万円程度の追加コスト がかかると見ておく必要があります。
つまり、先ほどの「値下がりケース」で1,000万円損をした上に、さらに500万円の維持費がかかれば、実質1,500万円の家賃を払ったのと同じ計算になります。
7. 賃貸の「隠れコスト」とは?
では賃貸はどうか?
- 引っ越し時の敷金・礼金・仲介手数料
- 更新料(東京などは2年ごとに家賃1か月分)
- 引っ越し費用
これらは小さくはない出費ですが、持家の修繕費や固定資産税と比べればコントロールしやすい費用です。
特に「ライフスタイルの変化に合わせて柔軟に住み替えられる」点は、賃貸の大きなメリットといえます。
8. 「金融リテラシー」としての簿記的思考
この話を理解できない人は、しばしば「売らないのになぜ売却前提?」という疑問を持ちます。
しかしそれは ストック(資産・負債)とフロー(収入・支出)の区別ができていない からです。
簿記を学ぶことで、以下の点がクリアになります。
- 持家は「資産」と「負債」を同時に持つ行為であること
- 賃貸は「支出」のみで資産・負債の変動はないこと
- 純資産を増やせるかどうかは、最終的に売却価値次第であること
つまり「マイホームを買うか、賃貸で暮らすか」という議論は、単なる感情論ではなく 簿記で見える経済実態 を前提に判断する必要があるのです。

9. まとめ
- 住宅は人生の三大支出のひとつ。
- 持家は「資産+負債」を抱え、売却時に損益が発生する。
- 賃貸は「支出のみ」でシンプル。
- 資産価値が上がる家なら購入のメリット大、下がればリスク大。
- 人生には想定外の出来事があるため、出口戦略(売却の可能性)は無視できない。
- 固定資産税や修繕費など、持家は見えにくいコストが積み重なる。
- 簿記を理解すると「持家vs賃貸」の違いがクリアになる。
結論としては、簿記的に考えるなら「資産価値を維持できる家」を買える人は持家有利、そうでなければ賃貸のほうが無難 です。
住宅選びはライフスタイルや価値観だけでなく、「経済実態」を踏まえて判断することが、金融リテラシーを高める第一歩となります。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
この記事が少しでも参考になれば幸いです✨